オールオンフォーのこんな活用法
リスク愛好者であれば、自分の健康を信じて病気に対する予防措置を十分に講じない可能性がある。
とはいえ、20歳から64歳までの男女の健康診断の受診率が56%であるからといって、日本人の2人に1人はリスク愛好者であると考えるのは早計かもしれない。
むしろ、本人はリスク回避的であるのにもかかわらず健康診断の機会費用と便益を比べた場合に、前者が後者を上回っているために健康診断を受けない、と解釈するほうが妥当性があるように思われる。
健康診断の便益とは、受診することで疾病の早期発見と病気の進展を防ぐ予防処置や治療が可能になるということである。
以下では、健康診断に対する個人の受診行動について理論的モデルを考察する。
受診するかどうかの決定では、本人は自分の厚生が最大になるように行動すると最初に仮定する。
ここでいう厚生とは本人の幸せ度とも考えられ、分析上「効用」という言葉に置き換える。
日常におけるさまざまな選択肢から効用が1番高くなるような選択肢を選ぶことを仮定して、個人の効用関数は1般的に以下のように表すことができる。
個人の効用はそれぞれの状態と確率から構成され、期待効用を最大化するように本人は意思決定を行うと仮定すると、以下の式(が定式化できる。
EU=mU(S+冗2U(S(式(において、個人が健康診断を受けて疾病を患っていない状態を、S,とする。
つまり、所与の所得能力をSbとして、そこから健康診断の費用BI・と社会保険の該当保険料Pを支払うと仮定する。
便宜上、健康診断1単位当たりの価格をBi=1とすると、状態S,は貨幣単位で次のように定義することができる。
S,=Sb-ルーP(次に、状態S2について次のように定義する。
S2=Sb-ルーP1冗()L(A,H)+(1−(式(の状態S2は、健康診断の結果病気が発見され、通院もしくは入院している状態を表している。
L(A,H)は、疾病を患うことから生じる金銭的損失(ロス)である。
L(A,H)つまりロスは、年齢Aと健康維持(または疾病予防)Hに影響されるとする。
年齢が高くなるにつれてロスは大きくなるが、健康維持や疾病予防の対策が行われればロスは小さくなる、という仮説を立てる。
また、ロスの大きさは疾病の種類によるので、ある疾病を患う確率を冗()とし、健康診断の関数であるとする。
健康診断は疾病予防としての役割もあるので、が大きくなれば疾病確率冗()は減少するという仮説を立てる。
疾病の場合に受ける医療給付や個人で購入している私的保険の補償などであるとし、gは病気にかかることによる心身の苦痛や、医療機関での待ち時間などの精神的苦痛などを示している。
以上のように展開した理論モデルから対男女間における健康診断の受診率の相違は、どのように説明できるだろうか。
結果から推測できることは、第1に平均疾病確率が高い人ほど健康診断を受ける可能性が高い。
第2に疾病の場合に予想される平均的金銭的損失が大きい人ほど健康診断を受けるということである。
これらのことから、男女問で健康診断の受診率を比較した場合、男性の受診率が高くなっている点を説明することができる。
また、同じ性別内で比較しても同様のことがいえる。
たとえば、ある年齢層の女性の疾病率は1定であると仮定した場合、金銭的損失が大きい女性ほど健康診断を受診する可能性が高いといえる。
このことから、家事に専念している国民健康保険の女性に比べて、労働市場に出ている女性(たとえば組合管理健康保険や共済組合の被保険者である女性など)は、受診率が高くなると説明することができる。
以下では、実証分析に使われているおもな変数について説明する。
変数ここでは、1995年の「国民生活基礎調査」における20歳から64歳までの年齢層のうち、とくに30歳から60歳までの就業者である約30万人の男女を対象としている。
その理由は、下限の30歳ではそのほとんどが学校を卒業して労働市場もしくは家計で労働活動をしていると考えられ、1方で、上限の60歳は1般的に退職の年齢であるからである。
つまり、30歳から60歳までの年齢層は、20歳から64歳までの年齢層よりも均1な母集団である点が挙げられる。
計量分析のモデルにおける従属変数は、健康診断を受けているかどうかを変数としている2。
もし個人が健康診断を受診していれば従属変数の数値を1とし、健康診断を受けていなければ0としている。
計量分析モデルにプロビツト.モデルを用いている2。
健康診断の受診行動を説明するためのおもな独立変数は以下に示す通りである。
性別の影響まず、最初に個人の性別の影響について考察してみる。
1般的に男性の健康診断の受診率は女性の受診率を上回っている2。
統計的に男性の平均寿命は女性よりも短く、年齢が上がるにつれて平均疾病確率は女性よりも高くなるので、健康診断に対する男女間の需要の差異は、健康という人的資源の差による影響が大きいと考えられる2。
性別の変数は分析の便宜上、男性を1、女性を0とするダミー変数を用いている。
この性別ダミーの係数は正と推測される。
つまり、他の条件を1定2計量分析のモデルにおいて、たとえば、個人の行動をYとし、その行動を説明する要素をXとすると、説明される行動Yを被説明変数(もしくは従属変数)、説明する要因Xを説明変数(独立変数)と呼ぶ。
2プロビット・モデルは計量経済学の1つの分析方法であるo説明される行動パターンが今回のように健康診断を受けたかどうかというような質的な場合(たとえば、受けた=1、受けなかった=0,と便宜上区別できる時)に利用される。
詳しくは、計量経済学のテキストを参照されたい。
2国民健康保険の被保険者については例外である(図5−1を参照)。
45歳以上の被保険者である女性は、同じ保険の男性よりも受診率が高くなっている。
2たとえば、「日本統計年鑑』第48回(199の表19-18主要死因、年齢階級別死亡者数(人口10万人当たり)、pp、674〜675を参照されたい。
年齢の影響年齢と健康診断の受診率の関係は、図5−1から明らかなように山なりの非線形であるので、年齢の2乗も変数として挿入している。
年齢の係数は、式(で理論的に示しているように正であり、年齢の2乗の係数は負と推測される。
年齢の係数が正であることは、年齢が高くなるにつれて健康診断を受とした場合に、男性の健康資本の減耗が大きく平均疾病確率が高いために、健康に対する情報が必要になり、男性は女性よりも健診率が高くなると考えられる。
また、40代、50代に病気を患った場合に生ずる金銭的損失等が、男性は女性よりも平均的に高いので、損失のリスクを防ぐために健康診断を受けるようになるとも考えられる2。
2性別ダミーの係数の符号の解釈には注意が必要である。
なぜならば、計量モデルの独立変数に健康に関する個人評価、疾病の数、そして通院歴などに加えて、所得に関係する変数も含まれているので、性別ダミーの係数の符号は、上記以外の影響として解釈されるべきである。
ける可能性が高くなることを意味している。
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